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海外・フィリピン/50mタワー失敗

非常に重い現地製コピー製品タワーを海岸段丘地帯に設置作業中、倒壊。死人・けが人なし。

倒壊の原因は、チルトアップ時のタワー形状にありました。

山岳地帯の地形に沿って、上方に湾曲した姿勢でタワーを組み立てました。 そこまではいいのですが、そのままの姿勢でチルトアップが進行した際、タワーの自重より上方湾曲側への曲げ応力が上回り、変形・座屈を起こし、破壊に至った。

その後、最初からやり直して無事、設置完了。

組み立て状況

設置地点の山頂付近を、タワー先端付近から見たところ。地形に沿って大きく湾曲している。

肉厚重量鋼管にもかかわらず、湾曲が大きい部分の断面がこころなしか変形しているような...そんなことはありません。変形していたら作業は中止です。

タワーの先端付近を見たところ。斜面の下方に滑り落ちそうな組み上がり状況。

アンカー

コンクリートで固めてあります。向こうにはきれいな南シナ海が見えます。

郷に入らば

ジンポールによじ登って、何やら作業する現地の人。こんなことを平気でする。生活がかかっているとなれば、何でもする。

豊かになった日本では、到底許されない光景です。

チルトアップ

地形の形状のまま、上方に湾曲した姿でチルトアップが進行。結果的にはこれがよくありませんでした。
NRGタワーの場合、ガイワイヤのリフターは、タワー本体を吊橋のように支える位置を決めて長さを出しているので、 チルトアップ時、タワーが安全な形状に維持されます。

一方、この現地製コピータワーは、そこまでコピーしてなく、リフターの位置を、タワーが地形に沿って寝ている姿のまま決めてしまったため、 チルトアップに安全な形状が作れませんでした。

チルトアップの開始時に、タワー先端から徐々に、見当でもいいからリフターの位置を修正すべきでした。

倒壊

タワー自重のベクトルがタワー軸方向に次第に傾き、湾曲の応力に勝てなくなったとき、変形が急速に進み、最後には座屈→倒壊に至りました。

変形の進行は、それでもスローモーションを見るようでした。
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