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海外・キリバス/34mタワー絶海の孤島

当社はキリバス共和国政府が実施した国際入札を落札し、同国のライン諸島とフェニックス諸島の開発拠点であるクリスマス島に、2ヶ所の風況観測塔を設置する契約を締結しました。

クリスマス島は世界で最も大きな環礁で赤道直下に位置します。国の役所の出先と3つの小さな村落しかない絶海の平和な孤島で、行くにもホノルルから週に1便しかない小型チャーター便に乗るしかありません。したがい、行ったら1週間後の便で戻る予定しか立てられません。

ギルバート諸島にある首都タラワから若い役人が立ち合いに来ました。同じく、初めてのクリスマス島ということです。同じ国の島に出かけるために、フィジーで米国のビザを取ってからホノルルを経由して自国の島に渡るという経路です。

日付変更線は日本側のキリバスとホノルルの間にあるため、ホノルルの乗り継ぎで一泊するときは、前後の日付を間違えないように気をつける必要があります。

南太平洋の孤島というと、タヒチとかフィジーとかの密林の暑苦しい熱帯気候を想像しましたが、高気圧帯から吹き降ろす風は乾燥して気持ちよく、夜はバンガローで寝るときも、波の音と一緒に入ってくる心地よい風でエアコンがなくてもしのげます。

その代わり絶え間なく頭上から照りつける日本晴れ直射日光の強さは半端でなく、まず耳の上と鼻の皮膚がすぐに日焼けします。乾燥した空気を吸っての屋外作業時には、水分の補給が欠かせません。

肝心な風況観測設置作業は、初日の現地踏査の結果、いずれも土壌が悪いことから、コンクリートでアンカーを固める方式としました。

アンカー設置を順に済ませ、コンクリート養生中に次の本体設置作業を順に進めるという工程で進めました。

ホノルル空港

日本からのホノルル便だと当日中の出発に間に合わないので、どうしてもホノルルで一泊。

翌日(日本出発日)ガルフストリームの双発プロペラ機でホノルルから4時間。。

機内

いろいろな缶ジュースと、けっこういけるお手製サンドイッチが用意されていて、セルフサービス。副機長がCA兼務。

小型機の4時間は意外と長い。

クリスマス島上空

環礁だけの島なのでさすがにフラット。樹木は密生していない。椰子の樹が均等な密度で陸地を覆う。

ラグーンの中は浅瀬で、お魚はあまりいそうにない。

到着

日付変更線を超えたのでホノルル一泊後の翌日(日本出発翌日)。

クリスマス島国際空港

横に走って行けばすぐに密入国できそうなところを、まじめに入国審査と通関を受ける。

空港を出ると、裏でいろいろな人が待っていて、中に首都タラワからの立会役人のお兄さんがお出迎え。

サイト踏査

早速、空港近くのサイトAを踏査。

設置場所を決めて簡単な測量後、ベンチマークを打つ(といってもその辺に落ちてる古タイヤを置いたり)。

次に。もうひとつのサイトBも踏査。

資材確認

予め届けてあった観測塔と計測資材が無事に届いていることを確認。

日本出発直前、輸送中の貨物数が足りないことが判明。足りないと思われる資材を追加発送すること、現地滞在が1週間延びる心配で、 ホノルル一泊中にすったもんだの対策をしたが、足りない貨物は別の貨物の上に載せてあったことが現地で判明。胸をなでおろす。
2日目

サイトA開始

レイアウトを決め、アンカーの穴掘り開始。何でも人力。

アンカー穴

サイトAはラグーンに近い砂地で、海水がすぐに涌いてくる。柔らかい砂なので崩れてくる。

穴の補強

砂が崩れ、どうしても穴が大きくなるので、砂袋で周りを補強して穴のサイズを最小限に。

こういうところでコンクリートはあまり使いたくない。

埋め戻し

コンクリート打説。

アンカー設置完了

コンクリートを打ち、あとは固まるのを待つのみ。

一日の夕食

バンガローお宿の食堂での夕食。他に宿泊客がいないから、食堂に立会お役人のお兄さんと二人だけの静かな時間。

横の大きな厨房から出されるメニューは多彩でボリュームあり。しかもうまい。 日本風に出てきた、まぐろのお刺身は、たいへんにおいしい。

日本では本当にうまいとき「まいうー」と言うのだとか、教えてやったりでだんだん仲がよくなる。

ジュースはもちろんココナッツ。
3日目

月面掘り

何もない炎天下のサイトB穴掘り。遠くの波の音と、穴を掘る音しか聞こえない。、

ビーチ

波の音が聞こえるくらいだから、干からびた地面を100mも歩き、乾燥に強い多肉植物の間を抜ければ、そこはビーチ。

太平洋

これぞ太平洋。リゾートのようなビーチでもなく、逃げ場のない太平洋の真ん中の、延々と続くビーチ。 水平線の向こうはずっと海。

サイトで穴掘りは続く。

サイトBアンカー

地盤は大きな礫交じりの固い砂地。

サイトA同様、周りを砂袋でかため、まず礫を入れて突き堅めてからコンクリートを打つ。

給水車

というか水の配達。コンクリート用。場所が場所だけに配達者も場所がよくわからず、少し待ちぼうけ。その間木陰で休憩。

自動車には日本の会社の塗装がそのまま。その方がいいのだ、とよく聞く。

アンカー設置完了

コンクリートを打ち、こちらもあとは固まるのを待つのみ。
4日目

サイトA組立設置作業

コンクリートがある程度固まったところで、設置作業の開始。

まずは地上でタワー本体の組み立て、チルトアップ準備完了。

チルトアップ

少しだけ上げてから、避雷針やセンサーの艤装。

それも終わり、あとは注意しながら起こすだけ。

ウィンチ側から見た風景

ウィンチの電源は自動車から。

チルトアップ完了

ジンポールが、貴重な自動車のボンネットに落ちないように注意。

ガイワイヤーをジンポールから外してアンカーへ。

風にそよぐ椰子の樹が美しい。

完成

データロガーを取り付けて、センサーからの信号線を接続して、観測開始。

輝くタワーとワイヤを見て満足。
5日目

サイトB組立設置作業

まずは地上でタワー本体の組み立て。タワー本体鋼管の継ぎ足し作業。

どこかのステージの演劇パフォーマンスを連想する風景。

センサー取り付け

サイトBも少しだけ上げてから、避雷針やセンサーの艤装。

ガイワイヤー作業

ウィンチ反対側のガイワイヤー長さを決め、クリップで留めているところ。

これが終われば、注意しながら最後までチルトアップ。

完成

サイトBもデータロガーを取り付けて、センサーからの信号線を接続して、観測開始。

輝くタワーとワイヤを見て、二日連続満足。

現地ご家族

立合お役人の親戚からご招待をいただき、夕暮れ時にご訪問。

家族なのかご近所なのかよくわからないが、犬まで出てきて歓待を受ける。

晩餐

一部屋に一同車座になり、一家の長がご挨拶をして、お祈りに続いてお食事。

肉から魚から野菜からごはんからフルーツまで、ブフェスタイルの晩餐。男衆優先の封建的戒律。

ご婦人方が、人前でもその場でごろんと横になるのが日本と違う。
6日目

いつもの朝食

教室のような食堂に、いつものごとく二人。

作業はほとんど終わり、くつろいだ朝食。

天気もよく、予定通り日程が進んだので、することはもはやあまりない。

揚水風車

サイトB近くには、オーストラリア政府援助の揚水風車が数基、村落に生活用水を送っている。

ひからびた大地によく似合う。

最終点検

設置の最終確認と、観測データの確認。

写っているのは日射量センサー。
7日目

トレーニング

契約の最後に含まれている、ユーザートレーニングを実施。

政府のインターネット回線を使って、データは遠く離れた首都タラワに送られる。

滞在中に電子メール送受信のため回線を使わせてもらったが、気が遠くなるほど遅い。 データを音声読み上げた方がまだ速いかも。

レセプション

クリスマス島の小学校整備の目的で来た、米国海軍ホノルル基地からの援助隊への感謝の政府レセプションがあり、請われて乗る。

ついでに感謝されることになった。

役所の前庭で、まず現地ご婦人方のポリネシアンダンス。

記念植樹

米援助隊代表が、記念のココナツ植樹。

アロハを着ているのが、クリスマス島の常駐役人トップの副所長。

貴賓席

ホストと主賓の一番前の席、といっても2列しかない。

日本の盆踊り会場にも似ているが、もっとずっとゆったりしている。

答辞のスピーチでは、暗くて観測タワーは見えないが、アメリカ軍が焼夷弾を空に撃ってくれれば見えるとか言って、無難に受ける。

ミス・クリスマス島

その年のミス・クリスマス島が一人でダンスを披露したあと、魚の歯でできたナイフの工芸品を主賓に授与。

つい顔がほころぶ。

ダンスパーティー

おなかも一杯になり、レセプションの最後はダンパ。

現地の役人はあまり踊らず、はりきって踊っていたのは現地のご婦人ダンサーと、アメリカ人と日本人だけだったような気がする。

二次会

主賓はその後、村長かどなたかの家に案内される。

その家はビーチに面し、庭にはお店のようなカクテルバーと、カラオケまで。

どこの世界にも有力者みたいな人はいる。

立ち合い役人、アメリカ軍人、日本民間人は思いもよらずカラオケを楽しみ、クリスマス島の宵は更ける。
8日目

バンガロー

1週間お世話になった、ビーチサイドの小屋。仕切りの右が私、左が立ち合い役人の部屋。

中にはベッドとトイレとシャワーと小さな冷蔵庫。エアコンはあっても、海からの風と静かな波の音の方がずっといい。

帰りの空港

1週間ぶりの飛行機がホノルルから到着。

なお米海軍隊は当然、自前の軍用機で送り迎え。

立ち合い役人とはここでお別れ。

ガルフストリーム貸し切り

ホノルルまでの帰り4時間は、乗客が一人だけ。やはり缶ジュースと、けっこういけるお手製サンドイッチ。

ホノルルには出発の前日着き、一泊してホノルルの翌日となり、日本にはその翌日到着。

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